西戸部のみつけかた展
2017.04.05
私たちY-GSA/IAS「次世代居住都市」研究ユニットは、2月27日から3月5日の一週間、西戸部の第4地区会館をお借りして今年度の成果報告として「西戸部のみつけかた展」を開催しました。この展示は、西戸部の地域の方々にむけて、私たちが半年間やってきたことを知ってもらい、お互いに情報を共有し合える場所にすることを目指しました。
「西戸部のみつけかた展」という名前は、私たち学生から見た西戸部の魅力、リスク、そしてその解決方法を「みつけかた」として伝え、逆に、地域の方達から普段の生活の中で見つけた西戸部の魅力を教えてもらう、そうした新しい西戸部を共に見つけたいという思いからつけました。
西戸部での合宿
私たちなりの西戸部をみつけるために展示の2週間前、オンデザイン設計によるヨコハマアパートメントをお借りして二泊三日の「西戸部合宿」を行いました。朝から夜まで実際に地域に入りこんで生活することで、スーパーまでの距離、昼間の人通りの少なさ、夜はすごく静かであることを知りました。地域に身を置いて一つ一つ丁寧に調査を行い、夜は議論を交わしながらその日にみつけたことを図面にしていくことで、より深く地域をみていくことができたように思います。また、地域の方や先生を招いた食事会では西戸部の面白いところについて話してもらったり、ミニエスキスによってより密度のある調査を毎日行うことができました。
3つの展示
コンテンツは大きく「地域を知り、タイプをみつける調査」「地域を更新する手段の提案」「地域の方と話しながら課題を見いだすコミュニケーション」の3つの軸によって構成されています。そして、これらが地域の方にわかりやすく、親近感をもって見てもらえるかを考えて作ったのが『西戸部の日常と暮らし方地図』『西戸部大解剖断面図』です。
『西戸部の日常と暮らし方地図』
個人や皆で使うまちなかのスペースや、場所を伝えるときの目印になるもの、繰り返し出会うものなど、私たちがみつけた様々なものを一つの地図にまとめました。住宅が密集している高低差のあるまちをどのように歩くか、体験するか、居場所をつくるかなどまちの使いこなし方をみつけています。
『西戸部大解剖断面図』
西戸部の街を断面で見ていくと、風景としていたるところに造成された宅地・擁壁・階段・坂がみられました。また、住宅との関係では、橋でつながっていることや視線のずれなどが見えてきました。高低差に対して人々が工夫を凝らしたアプローチをし続けていることが見つけられました。
このふたつの「みつけかた」は西戸部の暮らしの遺伝子(タイポロジーのようであり、トマソンのようでもある、生活と地形が関わり合っている状態や風景)をみつけたいということから始めた調査で、地域をよく知ることから新しい提案につなげることができるのではないかと考えています。これら西戸部の遺伝子を7種に分類をし、それが地域内でどれくらい見られるか、どこら辺に多いのかなど断面図から地形との関係性もわかりました。
表現としては一つ一つ色分けと写真を元にしたイラストを用いて図面化し、名前をつけてまとめています。実際には地域の方にも好評であり、場所を伝えるときにキャラクター的な名前を用いて教えてもらうことや、子供はこれ見に行きたいとイラストを指さしながらまちあるきへの興味を示してくれました。
密集市街地を更新する共同建替えの提案
手段の提案としては『西戸部の延焼過程ネットワーク図』『コーポラティブハウスの事例紹介』『学生ワークショップ提案』を展示しました。私たちは現在研究ユニットメンバー(正式名称入れてください)/アーキネット代表の織山和久と共同により、木造密集住宅街の更新方法としてコーポラティブハウスの研究も同時並行で行っています。
今回は火災リスクに対して現在西戸部はどれくらい危険かという図と、コーポラティブハウスという共同建替えが有効であるという説明、事例を紹介しています。今回は飯田善彦さんの八雲コートハウスとオンデザインのコーポラティブガーデンを紹介しました。コーポラティブの強みとして「敷地運用の最善化」「共同体つくり」の二つがテーマとなりました。
展示レイアウト
展示を通してコミュニケーションを取ることが目的だと前述しました。本展示会場では順路のないレイアウトとし、各コンテンツと西戸部の1キロ角模型を見比べてどこのことを説明しているのかわかりやすくすると共に中心でお話が始まるように考えました。実際に模型や「西戸部地図と日常と暮らし方地図」「大解剖断面」を見比べて「あああそこか、確かにあるよね」と地域の方に理解をしてもらい、私たちのみつけられていない裏話をたくさん教えてもらいました。
また、本展示にこられないと言う方も多いかと思い、より多くの地域の方に私たちの活動を知ってもらう為に展示内容を一つのストーリーにまとめた絵本を作成し、来場者に配布しました。
地域の再発見
展示を見て頂いた方からは「普段生活をしていて気づかなかったところを気がつくようにしてくれた」と評価をしていただきました。私たちの活動は西戸部での共同建替えを目指したものですが、このように地域の方に他者から見た地域の魅力、ポテンシャルを提示することは、地域の方にとって西戸部の魅力の再発見につながったのではないかと思います。私たちも今回の展示を通して、次に向けた課題やリサーチ不足の点に気がつくことができました。また6月の成果報告の場でいい報告ができるように進めていきたいと思います。